メンター

人生の中にメンターがいるという事は大切だと思います。メンターは、お友達や家族と同じようにサポートしてくれるけれど、同時に、道を失いそうになったときに、冷静に導いてくれる存在。そんな人が存在する、と思えること自体が心の安定を生み出すのかもしれません。

 

私のメンターはパウル・マイゼン先生です。マイゼン先生は世界で最も重要なフルーティストの一人。ハンブルグ州立オペラ元首席、バヴァリア州立オペラ元首席、デトモルト国立音楽大学・ミュンヘン国立音楽大学元教授のマイゼン先生、20世紀を代表する世界の著名音楽家と数えきれない程共演し、先生の下を巣立って現在世界の第一線で活躍するフルーティストの数も数え切れません。

 

私が先生に出会ったのは1996年、日本木管コンクールというコンクールにゲスト審査員としていらしていた時でした。その時私は高校3年生、このまま日本で東京芸大に進もうか、ニューヨークのジュリアードを受けようか・・なんて思っていた時期でした。このコンクールで運良く1位を頂き、表彰式の後、なんと先生が、「どこの大学に行くつもりかい?もし芸大なら、ちょうど来年から客員教授でいくからみてあげるよ。」と言って下さったのです!すぐに芸大受験を決めました。

 

先生と大学で4年間勉強できた事は、本当にラッキーだったと思っています。私にとって先生はすぐにメンターとなり、その事実は大学を卒業してドイツに引っ越しても、5年後に日本に帰国しても、そして2008年にアメリカに移住しても変わることはありませんでした。今日に至るまで、マイゼン先生は私の恩師であり、メンターであり、インスピレーションの源です。私が現在フルーティストとして知っている事全ては、マイゼン先生に教わった事といっても過言ではありません。吹き方も、教え方も、音楽全般へのアプローチの仕方も、全てがマイゼン先生から教わった事と、先生から受けたインスピレーションで構成されているのです。すぐに理解できた事も、何年も経ってからやっと理解できたこともありますが、先生に教わった事は数知れず、それらは私の心に深く刻まれています。

 

ここ数年教える機会が多くなるに従い、先生の言葉の重要さに改めて気付かされることが度々あります。数年前、「君は僕が教えた中で、最も才能があり、もっともナマケモノの生徒だったなあ!」とワイン片手の先生に、半分ジョーク半分真剣に愛を込めて言われたことがあります。その時は私もワイン片手に笑ったのですが、それ以来時々こんな思いが頭をよぎるのです。

「もし私が、キンバンギスト交響楽団のメンバーのように、もっと真面目にたくさん練習していたら、先生から教わる事はもっと多かったのかな・・」

 

若気の至りで、まあいろいろありましたが(笑)、過去を変えられるわけではありません。そして、ナマケモノの私でも、音楽・人生観共に数えきれないほどたくさんの事をマイゼン先生から学びました。先生から教わった様々な事は今でも私を影響し続けています。今日は皆さんと、私が教わった、いくつかの大切な教えをシェアしたいと思います。

 

『知性を感性へ、感性を知性へ。』:両方の脳をフレキシブルに使う事が大切である。

 

『他のパートを知って、自分のパートを理解しよう』:まわりを理解しながらコラボレートする事。人間一人じゃ生きていけません。

 

『自分が自分の一番キビシい先生じゃなきゃいけないよ』:説明不要ですね。自分に責任を持って、自分で自分を高める事。これが私が学生時代出来なかったコトです。はい。

 

『考えて考えて考えて、忘れるんだ!』:音楽も人生も真剣に取り組もう。常に好奇心を持ち、失敗を恐れない事。でも何よりも大切な事は、時が来たら、勇気を持って解放すること。挑戦して経験したことは、ちゃんと次に繋がるから。

 

教師として私はこれらの教えを生徒たちに伝授することが大好きです。リアクションは人によってまちまちなのですが、私が教えた中で一人、これらの教えを一つ一つすぐに理解し消化し、心の中で受け止められた生徒がいました。その様子はまるでマイゼン先生のレッスンを度々受けていた頃の自分を見ている様でした。その生徒は、Music BeyondのパートナーのNanaちゃん!そうなんです、ななちゃんは私の元生徒なのです!マイゼン先生から教わった数々の教えを、目を輝かせて理解したななちゃんを見たとき、私の先生としての仕事は終わったなと悟り、次はこの教えを一緒に広めていこう!と思いついたのです。

 

マイゼン先生の教えには、音楽を高めるだけでなく、人生を高めて、職種関係なしに大切なことを学べるという素晴しさがあります。そう、Music Beyondの哲学は、全てマイゼン先生の教えから来ているのです!

 

私が尊敬する別の一人はこんな素敵なことを言いました。「お金は永遠には続かない。死んじゃったら持っていけないんだしね。でも、次から次の世代へと、影響が続いていくものもあるんだよ。例えばバッハの様な素晴しいクラシック音楽の数々、それから受け継がれてきた、いいメッセージとかね。」さて、この素敵な言葉は誰のものでしょう?その名は、青森よしおさん、ななちゃんのお父さまです!(^^)

 

私たちの教えが、どんなに小人数でもいいから、数人のミュージシャンの心に良い影響となって残ってくれることを心から願っています。そうすれば、その教えは、私たちがいなくいなくなった後も続いていくかもしれないから・・。そんな小さな小さな可能性が私を前進させ、Music Beyondへの愛へと繋がっていっているのです!

- Kaori