旅行後のブルース (7/12/14)

5日前、香織と私はヌジリ国際空港でキンシャサで出会った新しい友人たちとの別れを惜しんでいました。初めて訪れたアフリカ、コンゴ民主共和国の10日間の滞在の終わりの日。いつまた訪れることが出来るかわからなくて悲しくて、コンゴみたいな国に不法滞在してみようかなんてちらっと考えちゃった自分がおかしくて、この国から安全に出国できることに安心もしていました。

東京で生まれニューヨークで育った私は、親族と会うために何度も夏休みを利用して東京に訪れました。フルート奏者としても様々な場所に行き、だからこそ旅行を終えての虚無感は慣れ親しんだ感情。離れてからのノスタルジーに浸って、戻ってその文化の一員になってしまいたい気持ちをもてあまし、新しい自分を発見できた気になって、それらの気持ちが薄れたらまた元の自分に戻る。滞在期間が長かろうが短かろうが、いつも途方も無く長く感じて、同時にあっという間だったと思い、どれだけのことを学んだか把握も出来ず、同時に自分は一生知らないことばかり増えていくことも自覚するのです。

もしかしたらまだ旅行後ノスタルジーから開放されてないのかもしれません。まだ見たもの全部を消化しようとしている最中で、それでいて「ムンデレェ」(部外者、外国人)でしかいられないことも分かっているし、あの国で何が起こってるかなんて自分には本当の意味で理解できる日はたぶん来ないでしょう。大きくて複雑な問題が絡み合ってる国で、そんなことに口出しできるような立場でももちろんありません。

でも、私が話せることは音楽。

香織と私がこの旅で一番感動したのは、オーケストラのミュージシャンに会ったとき。彼らは本当に優しくて寛大で、謙虚でした。毎日生きるために精一杯な暮らしで、水も電気も、安定した仕事も無くて、一日に食べる食事さえあるかどうかもわからない生活。そういう人生を歩んでる人たちが、音楽家としてオーケストラを築いて、それに情熱を傾けていました。すぐに私たちも受け入れてくれて、彼らといるとホッとしたものです。一人ではもちろんのこと、ドライバーでさえできなかった、オーケストラの拠点ンギリンギリ地区を、メンバーと一緒に安心して歩き回ることまでできました。彼らの音楽に対する忠誠心が私たちを繋げ、さらにお互いを尊重できる信頼関係へと広がっていったのです。

この出会いは、大使館からのセキュリティについての説明、外交官たちからの警告、ランドローバーの座席から、「写真撮影厳禁」(写真撮影についてはまた次の機会に)「窓は開けてはいけない」などと言われながら見た街の景色、そんなことの後だったからこそ、さらに特別に感じたのかもしれません。コンゴ民主共和国のような国に住む音楽家たちの芯の強さは想像することしかできません。

コンゴで、お金も、フルートも、パスポートも心配せず放置して教えることに専念できたことは、ある意味ニューヨークのスタジオやホールで教えることと同じような心地よさでした。帰国した今も、彼らとのつながりを感じ、彼らに会えたことを幸栄に思い、彼らの情熱にインスパイアされ、毎日フルートを構えるたびに彼らを思い出しています。この感覚は本当にパワフルで、いつもの旅行後の虚無感とは何かが違います。2週間前まで、彼らの名前すら知らなかったことが信じられない。この旅は本当に特別な想いにあふれていて、こうやって想いを書き出していくことが、消化に繋がっていくような気がします。また聞いてくださいね。

Nana